大判例

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東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)95号 判決

一 被告コムテツク・インコーポレーテツドは本件口頭弁論期日に出頭しないが、公示送達による呼出を受けたものであるから、同被告について擬制自白に関する民事訴訟法規を適用すべき限りでないことはいうまでもないところである。

そして、特許無効の審判において、特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは特許権ははじめから存在しなかつたものとみなす旨(いわゆる対世的効力)を規定した特許法第一二五条及び確定審決の登録があつたときは、何人も、同一の事実及び同一の証拠に基いて無効審判を請求することができない旨(いわゆる一事不再理の原則)を規定した同法第一六七条の法意に照らすと、併合して審判された特許の無効審判請求について、無効審決がなされ、これに対する取消訴訟が提起された場合には,その審判請求が同一の事実及び同一の証拠に基くものである限り、その特許の効力に関する法律関係は複数の審判請求人について合一的に確定する必要があり、したがつて、その訴訟形態はいわゆる類似必要的共同訴訟に該当するものと解されるところ、その方式及び趣旨により真正な公文書と認むべき甲第一号証によると、本件特許無効の審決は、被告らが同一の事実及び同一の証拠(引用例)に基いてなした特許無効審判の請求を併合して審判したものであることが明らかであるから、その取消を求める本件訴訟は被告らについて必要的共同訴訟に該当するものというべく、そうだとすれば、被告スリーM、同株式会社内田洋行、同ニチバン株式会社は原告主張の請求原因事実を明らかに争わないものとみられるけれども、被告コムテツク・インコーポレーテツドとの関係上、民事訴訟法第六二条第一項の規定によつて、結局、右請求原因事実を自白したものとみなすことができない。

二 よつて、進んで審究すると、前出甲第一号証、その方式及び趣旨により真正な公文書と認むべき甲第二号証(本件特許公報)及び弁論の全趣旨を総合すると、請求の原因のうち、前掲一ないし三の事実を認めることができる。

三 次で、本件審決に原告主張の取消事由があるか否かについて検討すると、請求の原因三として右に確定した審決の理由によると、審決は、引用例には本件発明と相違して「薄板がなまされた状態のミセル構造を元々持つていること」((c)の点)の明記がないことを認めながら、引用例に「記入された薄板を約一五〇度Cに加熱して完全に記載物を消し、新しい図形を記載するのに用いることも可能であること」の記載があることを根拠として、引用例における薄板もなまされた状態にあり、かつ、均質なミセル構造を有すると判断し、引用例に右記載があることは原告の自認するところである。

しかし、右記載には、薄板を加熱することが示されているに止まり、薄板がミセル構造を有することまで触れるところがなく、真正な外国の公文書と認むべき甲第三号証(引用例)に徴しても、右記載をもつて引用例の薄板がミセル構造を有するものであることを開示したものと解すべき根拠とするに足る記載は認められないから、審決の右判断は、少くとも引用例における薄板が「均質なミセル構造を有する」とした点に誤りがあるといわねばならない。

しかるに、一方、請求の原因の二として先に確定した本件発明の要旨及び前出甲第二号証によると、本件発明においては、薄板が「なまされた状態のミセル構造を元々持つており」、そのミセル構造が「冷流動変形によつて邪魔されてその変形個所に対照色を提供する」ものであることを構成要件とし、これによつて地色とは著しく対照色である白又は他の色ないしは尖鋭な対照色による隆起した対照模様又は浮出しを形成することができるという顕著な作用効果を奏することが認められる。

そうだとすれば、右審決は、引用例が本件発明との相違点とし認定した(c)の事項の記載がないことに関する評価を誤り、その結果、本件発明について、特許性を否定して、その特許を無効とした点で、既に違法であるといわなければならない。

四 よつて、本件審決の違法を理由に、その取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。

第三 証拠

原告訴訟代理人は、立証として甲第一ないし第三号証を提出し、被告スリーM訴訟代理人は、甲号各証の成立を認めた。

第四 附記

被告スリーM訴訟代理人は原告主張の請求原因事実について答弁せず、その余の被告らは適式の呼出(ただし、被告コムテツク・インコーポレーテツドについては公示送達による。)を受けながら本件口頭弁論期日の出頭、答弁書その他の準備書面の提出をしなかつた。

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